写真企画展の展示内容について、こちらでも少しご紹介します。ご来場いただいた方・ブックレットをご購入いただいた方との兼ね合いもあるため、エッセンスのみをごく簡単に(写真もあえてラフに)。
まずは、テーマ/コンセプトの説明、およびハレの日の展示内容からどうぞ!
テーマ/コンセプト
今回の写真企画展のテーマ/コンセプトは、簡単に言うと「ふつうのカンボジアを伝えたい。日常にフォーカスしたい」というものです。
それを告知やブックレットではこのようにちょっと長めの文章で表現し、プレスリリースや展示の解説板では、下記のように簡潔に表現しました。
カンボジア広報活動の一環として、写真企画展を開催いたします。貧困、地雷、遺跡という側面からでは捉え切れない、カンボジアの彩り豊かな日常(ケ)と少し特別な非日常(ハレ)を、豊富な写真とともに解説します。是非この機会にご来場いただき、本当のカンボジアを発見してみてください。
日常はニュースにならないと言いますが、報道(貧困・援助)の側面からも、観光の側面からも取りこぼされる、「ふつうのカンボジア」を伝えたいというのが狙いです。また日常の対極にある「ハレの日」の概念にも焦点を合わせることで、カンボジアの生活世界全体を表現できるのではと考えました。
図解するとこんな感じ。人びとのカンボジアへのまなざしを、ほんの少し動かすこと。それが私の願いであり、この写真企画展の目的でもあったのです。
ハレの日
非日常であるハレの日、すなわち冠婚葬祭については、「セレモニーごとに解説する」という展示方法を採ったため、割とスムーズに写真の選定が進みました。見せ方が単純であるので、それに沿った写真選定を行なえば良かったからです。
その分ポイントとなる儀礼の選定には注意を払いました。これらは民族性・宗教性が如実に現われるものであるし、その多様性を伝えたいという意図もあったため、ひとつの民族に固執しないよう、まんべんのない選択を心がけたのです。
最終的に選出した儀礼は、①中国正月、②マウリド/生誕祭、③プチュムバン/お盆、④結婚式、⑤葬式・埋葬・墓地の5点。④、⑤については、さらに各民族ごとに細分化して解説を行ないました。以下に詳細を記します。
①中国正月(左)
カンボジア三大正月のうちのひとつ。「カンボジアには年に3回正月が訪れることをご存じだろうか?」のキャプションに興味を引かれ、質問してくださる方も大勢あり。「神戸の南京町のようね」というご感想も。華僑・華人の居住範囲の広さとたくましさには、一同皆納得の様子。
②マウリド/生誕祭(左)
イスラームにおける祭りのひとつ。ベトナムのチャム族とも深い関係にある、非常に珍しい祭り。カンボジアのムスリムの中でも、特に少数派のグループだけが行なっているものである。2009年、偶然この祭りに遭遇し、参加機会を得た時の喜びと興奮といったら…!!今思い返しても、本当に貴重な経験であった。
③プチュムバン/お盆(右)
カンボジアの年中行事の中で、最もポピュラーといっても過言ではないのが、こちらのお盆。例年9月か10月に行なわれる。期間は15日間でうち3日間が祝日。寄進の品を手に、家族総出で参拝につめかけるので…寺の中はさながら御馳走の見本市のよう!このインパクト大の写真に、皆さん釘付けであった。
④結婚式
左からベトナム系、ムスリム、カンボジア人の結婚式の様子(右はじの白装束はお葬式)。とにかく皆、その派手派手しさに驚いていた。
私としては、中央の写真について、新郎がイスラーム式・新婦がカンボジア式(クメール式)の伝統衣装を身にまとっているところが、カンボジアのムスリムの在り方として非常に興味深いのであるが…(そしてそんなことの研究を深めたかったわけであるが)…なかなかそのようなマニアックなところまで話を進めていいのかどうか。匙加減が難しいところでもあった。
⑤葬式・埋葬・墓地
左からA・中国系の葬式、B・ムスリムの埋葬、C・ベトナム系の墓地と寺の火葬場、D・山地少数民族の墓地の様子。民族によって土葬・火葬の違い、墓の有無の違いがあるため、葬送儀礼と墓地の在り方は、カンボジアにおける民族多様性の集結場所とも考えられる。
様式に差異はあれども、共通しているのは死が日常的に身近にあるというところ。この点については、写真企画展のブックレットから、少し引用してみたい。
日本に比べはるかに濃密な親族関係を生きる、カンボジアの人びと。年長者と共に暮らすことは当然であり、彼らの老いとその弔いも、身近な出来事なのである。実際、ムスリムの子どもたちは、安置された遺体に聖句を朗誦する様子や、遺体を洗い清める作業を、いつもどおり遊ぶ傍ら見守っていた。
非日常ではあれども、死が分断されたものではなく日常の延長として確かに存在しているカンボジア。むき出しのリアリティーは、人生の最期において、最も色濃く溢れ出る。
「むき出しのリアリティー」については、ケの日のところで別途解説するが、この「生々しさ」「ダイレクトさ」が、現代カンボジア社会の特徴のひとつではないかと考える。そしてまた、日本社会がとうの昔に捨て去ってしまったものであると言えるだろう。
このような葬送儀礼から見えてくるカンボジアの家族観や生活観については、特にご年配の来場者の方から「共感を覚える」「懐かしい」との感想をいただいた。在りし日の日本の光景が、現代カンボジアによって脳裏によみがえる。会期中はそんな場面に幾度か遭遇したのであった。
ケの日
※展示内容・紹介&解説 ② に続きます。
2014年9月に開催した、個展の概要です。
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【期間】2014年9月27日(土)~10月2日(木)
【時間】10:00~18:00(最終日は17時まで)
【場所】町屋ギャラリーbe京都2F
【料金】入場無料
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